冷たいキスなら許さない

「本木さん、二番にお電話です。イースト設計の桐山さんとおっしゃってます」
午前11時にそれは来た。

会社にかかってきた電話を無視するわけにはいかない。
向こうはしっかり名乗って来ているし、同じ業界の人間だ。再び離れた席にいる下北さんの視線を感じる。

ごくりと喉を鳴らし意を決して受話器を上げた。
「お電話代わりました。本木でございます」

「俺、この週末、灯里が電話をしてくれると思って待っていたんだけど?」
いきなり何という言い草だろう。

「申し訳ございません。必要性を感じなかったものですから。で、桐山様、わが社に何かご用でしょうか?」

「一度、会いたいんだけど。時間とってくれないか?」

「・・・どのようなご用件でしょう。しかるべき担当者と代わりますので教えていただけますか?」

「灯里、俺のこと拒絶する気持ちはわかるけど、少しでいいから。頼む。じゃないとそっちの会社に直接乗り込むよ」

息をのむ。

直接ここに来るというのか。
櫂が業界の有名な事務所にいると知った今、それはかなりめんどくさい。
下北さんの視線もビシビシと感じるし。

「・・・いつがよろしいでしょうか」
お腹の底から声を絞り出した。



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