冷たいキスなら許さない
「実は当時けっこうひどい別れ方をしてまして・・・それをあっちが謝ってきました。
過去の反省しないと前に進めないとか何とかって。本当に勝手ですよね。そんなの自己満足なのに。勝手に謝ってくるから私のことはほっといてって言ってやりました」

ねぇ、社長。私間違ってますか?とばかりに顔を見つめる。

「会社のためなんて考え方はしなくていい」

「そんなわけにいきません」
私にだって愛社精神がある。
それに調べて知ったけど超有名なイースト設計の仕事を受けるということが業界でどんな意味をなすのかはわかったつもりだ。


「灯里はさーー
・・・まぁいいか、お前明日は朝からうちで働けよ」

「はぁ?」
いきなり話が変えられて訳がわからない。私が何だって言うの。

「ベッドを作る」

おお、やっぱり作り直す気になったらしい。
「でも何でわたし?」

「作りたくないのか?」

「作りたい。作りたいんですけど、私が手を出してまた軋むベッドが出来ちゃったらどーしようかと」

自社の木材を使うとはいえ、安いものではないだろう。せっかく作り直すというのに私がまた邪魔するのはどうかと思う。

「今度はしっかり見張るから大丈夫だ。片時も目を離さないから」
社長は爽やかに笑った。


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