君に心を奪われて




「おっ……おい……」


翼を連れて来たのに驚いているのか、顧問の川上先生は固まっていた。


「何で男子を連れて来てんだよ!しかも、受験生だろ!」


そりゃ怒られるよな。まぁ、翼が勝手について来ただけだしね。


「先生、ごめんなさい。俺が勝手について来たんです。花菜を見てていいですか?」


翼、言い方を考えないと変態に感じると思うよ。


「仕方ないなぁ……いいぞ」


「ありがとうございます!」


翼は深くお辞儀をした。こんな私なんて見てもつまらないのに。


「行け、花菜もう一本!」


翼が応援してるのは嬉しいけど、うるさくて恥ずかしいからやめてほしい。


「翼……静かにしてくれる?集中出来ないから」


「あっ、ごめん!静かにしまーす」


私の荷物の隣にちょこんと座る翼が可愛くて笑ってしまう。


「花菜、笑ってないでやれよ!」


「はいはい、やりますよー」


試合の続きを始めようとする。みんなはドン引きしているようだった。恥ずかしい気持ちになる。


大嫌いなヤツには勝てなかったが、まぁまぁ強い左利きの子と一番弱そうなヤツを倒すことが出来た。きっと翼のおかげだと思う。


部活が終わると、一人で座る翼のところへ向かう。


「お疲れ!スゴかったな」


「ありがとう!早く帰ろ?」


「そうだな」


「ありがとうございました!」と言って、部室から出て行く。


「また秘密基地に行くか」


「うん!」


私は翼と一緒に歩いて秘密基地へ向かう。


秘密基地でいろんな話をした。すごく楽しかった。


「花菜、明日は晴れるように願おう?」


「うん、そうだね」


私達は体育祭が無事に出来ることを祈った。
















< 14 / 80 >

この作品をシェア

pagetop