君に心を奪われて



「翼ー!」


俺が教室に戻ろうとした時、茜が俺に話し掛けてきた。別れようって言ったのに懲りないな。


「本当に花菜ちゃんと一緒に居ていいって思ってるの?」


「何で……」


何でコイツは花菜を知っているんだ?そんなに俺と居たいのか?


「花菜ちゃんは翼と一緒に居たら不幸になっちゃう」


「はっ?意味わかんない」


花菜は俺と居たら不幸になる?どうしてそんなに俺達を離れさせようとするのか?


「貴方は、忌み子なの。本当は生きてたら危ないの」


「忌み子?お前……」


「本当なの!自分の“里親”に聞いて見たら?」


「里親……?」


「じゃあね!」


そう言って、茜はそそくさと去って行く。俺はその場で立ち尽くして居た。


俺が忌み子……?俺と居たら不幸になる?よくわからない。


とりあえず、母さんに聞いてみることにしよう。





「ただいま」


「翼……」


「父さん……」


玄関には腕を組んでいる父さんが立って居た。殴られそう……。


「話がある」


「えっ?」


父さんはリビングへ向かう。俺も肩を震わせながら父さんについて行く。


父さんはリビングにあるソファーに座った。


「茜ちゃんに聞いただろ?お前が忌み子だってことを……」


「……うん」


「あれ本当だ」


嘘を言っているのかと思ったが、父さんは真剣な顔をしていた。


「お前はもらった子なんだよ。お前を生んだ親は人間じゃない」


「えっ?」



「お前は―――」



俺はそのまま自分の部屋に逃げて行った。ベッドに倒れ込んで泣いた。


俺は人間じゃなくて――だったんだ。だから人を不幸にしてしまうというのか。


でも本当に不幸になるかはわからない。俺は、花菜と幸せになるって決めてる。


俺は、花菜と一緒に居るんだ。





その決断がたくさん花菜を苦しめることになるなんてその時の俺は知りもしなかった。







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