君に心を奪われて

高校生になった日常




あれから二年の年月が経った。私達は同じ高校に入って、学校一の幸せカップルと言われるほどになった。


桜が舞い散る中、私は考えていた。何で、翼と同じ学校に入って同じ学年になって同じクラスになっているのだろうか。


「あっ!」


「えっ、何?」


隣で翼が驚いた顔をしていた。これは絶対にやらかしたな……。


「今更だけど、能力使ったでしょ?」


翼は一瞬固まって顔を私から背けた。分かりやすい者だ。


「まず私と翼の成績がこんな学校に行けないし、翼は留年するほどの成績の酷さでもないのに!やっぱりそうだったのね!」


「うっ……ごめんなさい」


「ごめんで済まないでしょ!命削ってどうするの?最近、命助けてヤバい状態なのに!」


二年前の冬、翼は私の初めての友達を救ったのだ。友達は病気に死にそうだったのを翼が能力を使って運命を変えてしまったのだ。


それなのにわざわざ同じ学校に入らせて、自分は留年して同じクラスにするし、正直呆れてしまう。それほど私が好きなんだろうなぁ。


「ごめん……花菜が好きだから」


「それ言って許すと思う?」


「花菜のこと愛してる」


翼は自分が原因で言い合いになると最終手段として愛の言葉を囁いてくる。もうそんなのは慣れてしまった。愛してくれているのは本当だけどそれで気が緩んだりはしない。


「もう慣れたし」


「こんなことしても?」


「えっ……」


翼が私の顎を持ち上げて唇を重ねた。中庭なのでたくさんの人に見られて歓声が上がっている。私は翼の肩を押して離れた。


「やめて!」


「いいじゃん。花菜が好きだし」


顔の温度が一気に上昇していく。君はどうして人前でこんなことを言えるのかサッパリわからない。


「花菜の初友はどこの高校に行ったんだっけ?」


「栞奈ちゃん達は征也さんと同じ松島高校に行ったよ。あそこは行きやすいからね。雪人くん達は莉奈さんと同じ西宮高校だよ」


みんなは私立の高校に行ってしまった。私達だけが公立の普通科に入学したのだ。


「翼、茜先輩ってどうなったの?」


「うーん、茜は県外の高校に行ったとか聞いたよ。都会で有名なすごい女子校らしいよ」


「うわぁ、女子校とか羨ましいな」


懐かしい仲間の話をして少し切なくなった。あんな風にみんなが集まって笑い合う日はもう来ないんだろうな。


「またみんなに会いたい」


「そうだなぁ……」


翼は私の頭を優しく撫でてくれた。


やっぱり私は君が好きなんだ。ずっと……。





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