転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
急いで向かうと、もうグイードは来ているようだった。

「舞花、遅いぞ」

「ごめんなさ、い……」

私はぱっと視線を上げて固まった。

「どうした?」

「……い、いえ」

グイードが着ているのは白い軍服だった。ただ装飾は華美だし、片方の肩にだけにマントを羽織っているので実用的なものではなくこのような時に衣装として着るものなのだろう。黒ではなく白というのもいい。彼の綺麗な赤の目がよく映える。

うわあ、最近改めて思うことがあんまりなかったけど、やっぱり黙ってればただの物凄い美形だ。目に眩しい。直視できない……という心の中の動揺を押し殺して、私はにっこりと微笑んだ。

「似合いますね、グイード」

グイードがきょとんとした顔をした。そのまま、みるみるうちに赤くなる。

「そ、そうか」

それだけ言うと照れたようにそっぽを向く。

私は思わず無言で天を仰いだ。彼はどうしたんですか、今日は。素直すぎませんか。

しばらくして顔色の戻ったグイードが小刻みに頭を振った。

「あれだ、俺は……柄にもなく緊張しているようでな……」

「ああ、なるほど。それでそんな感じなんですね?」

「お前は案外大丈夫そうだな」

「いや、私は始まる前は大丈夫なんですけど、いざその場になると急に駄目になるタイプなんですよ」

「……頼りにならないな……」

はあとため息をつかれる。そもそも私を当てにしないでほしい。

「まあ、お前も馬子にも衣装だな。黙って座っていれば問題は無いだろう」

「……あなたは素直に褒められないんですか?」

「褒めたらお前はつけ上がるだろうが」

グイードがふんと鼻を鳴らした。調子を取り戻してきたらしい。それに言い方は素直ではないけれど私を叱咤してくれるくらいの余裕は生まれたようだ。

こっそりほっとしながら、私は進行に従い差し出されたグイードの腕を取った。
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