転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
「殿下。私、貴方のことが好き“でした”のよ」

「な……!」

これに声を上げたのは私だ。

あなたそれ言うの?休戦っぽい雰囲気を醸し出したのは一体何だったのよ!

そんな心の声が聞こえたわけでもないとは思うが、少女はちらとこちらに視線を寄越すと言葉を続けた。

「でも……今は私、マイカのことが少し気に入ってしまっているみたいですの。
今まで私にあんなに真っ直ぐにぶつかってくる人、いなかったものですから」

元想い人に挑戦的に碧い瞳を光らせて。

「この子、絶対人たらしですわ。あんまり安心していたら、するりと腕から抜け出してしまうかもしれませんわよ。
私もライバルですから……よく覚えておいてくださいませね?」

「ちょっと、アマルダ!」

聞こえていただろうに、まるっと全て私の声を無視すると彼女は金髪を揺らしながら去っていった。

「……嵐みたいだった……」

ぐったりしてソファにもたれ掛かると、じっとグイードがこちらを見つめているのがわかった。

「なんですか?」

「いや……お前は同性もいけるのかと認識を新たにしているところだ」

「やだなー、あんなの冗談に決まってますって」

ははは、と笑い飛ばしたけれど王子は拗ねたように微かに唇を尖らせている。

私はそっと手を伸ばすと、その頬に触れた。

「……ちゃんと言葉として聞かないと安心できないなんて意外と欲張りなひとですね。
何があっても、私はあなたが一番です。それだけは自信を持って言える。あなたがわかったと言うまで、何回だって言いますよ」

こちらを真っ直ぐに見つめる赤の瞳を覗き込む。
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