Project Novel

廊下に赤茶色の夕日が線を描いていた、あの日の放課後。

私は反対側の校舎から、その人を見つけた。

その人は教室の窓に腰かけて、しゃぼんだまを揺らしてた。

ここは三階で、一瞬危ないと焦ったけど、でもそう感じたのも一瞬で。

その人に危うさはなかった。
足下はぶらついてるのに、でも絶対落ちないという確信があった。

だからこそ、夕焼けにふわふわ浮かぶしゃぼんだまが、とてもミスマッチで。

とても綺麗で。


私は走った。
初めて、息がきれるまで走った。
そして、反対側の校舎にあるその教室に飛び込んだ。


教室は思いの外暗かった。
夕日は壁に遮られて、満たすのはただシャボンの香り。

振り向いたその人の瞳は、どこか夕焼けの色に似てた。

どこか哀しかった。


その人は、いきなり飛び込んできた私に驚きもせず、窓枠から降りた。

鞄を手にし、私に小さく一礼をして、教室を出て行く。

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