クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
何人入れるの?というレベルのお風呂に一緒に入りパジャマを借りて就寝。
女子のお泊り会みたいだ。横手さんは合コンや飲み会は行っても、女友達とこういうことをしたことがないらしい。

翌朝には、私の服は横手さんのお母さんにより洗濯され綺麗にアイロンがかけられてあった。うう、申し訳ない。ありがたい。今度、何か御礼しなければだわ。
そして横手さんのお母さん手作りの朝食をいただいてふたりで出社……というのが昨日から今日までの流れ。
山根さんが苛々を隠そうともせずに言う。

「横手さぁ、最近真純先輩と距離近すぎない?なに調子のってんの?真純先輩の部下、うちらだから」
「部下とか上司とか関係ないんです。私と阿木さんは純粋に仲良しのお友達になったんです。昨日だって、雨の中ふたりで協力して避難したんです。ねえ、阿木さん」

否定する理由もないので、うん、と頷くけれど、ねえねえ横手さん、千石くんの存在が微妙に忘れられてない?あなた千石くんのこと大事なんだよねぇ。

「横手、腹立つ!真純先輩、今度私と持田先輩ともお泊り会してください」

山根さん、どうして横手さんと私を取り合っているの。というか、山根さん、チョイチョイゆるふわキャラから素がこぼれ見えてるんだけど。
ぎゃいぎゃい騒いでいる山根さんと横手さんを放置して持田さんが私に聞いてくる。

「千石さんは一緒じゃなかったんですか?……あ、答えなくてもいいです」

聞いてから何かあってはと気をまわして訂正する持田さん。うんうん、何かあったから答えづらいわあ。

「横手さんの家に避難するまで一緒に雨宿りしただけよ。あ、山根さんと持田さんのひざ掛け、寒くて借りちゃった。洗って返すね」
「いいですよ、そんなの」

持田さん、どうかこれ以上勘ぐらないでね。気遣い屋の彼女は勘ぐってもきっと口にはしないのだろうけれど。
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