クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
休日が明け月曜、私は朝から目の回る忙しさだった。
単純に処理する業務が多すぎる。それもこれも、金曜に行われたレセプションのため、先週はほとんどそちらの準備にかかりっきりだったからだ。

朝から千石くんと手分けして仕事をこなしているけれど、量が多い。
彼には外回り関係の仕事を任せて、私は事務処理をメインにした。本当は逆がいいんだろうけれど、今回のレセプションで、千石くんはすべての資料をフランス語訳していた。仕事の早い彼でも毎日残業していたし、デスクに張り付きっぱなしだった。息抜きにはならないけど、他の仕事を任せたかった。

「真純先輩、第一営業部の書類に不備あります〜」

山根さんが困惑げに声をあげる。

「突っ返しなさい」

すげなく答えると次は持田さんが言う。

「特別販売部の添付資料足りないですね。リジェクトされるの間違いなしです。押し通しますか?」
「元々その資料ないのよ。でも役所関係はそのへん細かいから、悪いけど持田さんどうするか打ち合わせしてきてくれる?」
「わかりました」

持田さんが席を立ち、特別販売部に向かいオフィスを出ていった。

持田さんと山根さんには、レセプション直前に細々した用事をかなり手伝ってもらったので、ふたりの仕事も相当溜まっている。
総務二課渉外グループの四人は、しばらく忙しい毎日になりそうだ。
そしてこの多忙を、私はちょっとありがたく思ってもいる。
だってほら、千石くんとの約束……一応食事はオーケーと言ってしまった。
というか彼に任せてレセプションが失敗するわけないし、私も営業部も尽力して成功させたんだから、あの誘いに乗った私がバカだ。『一緒に食事に行きたいなぁ』って言ってるのと同じじゃない。
でも、あの時は彼に『ご褒美』と言われたし、断りづらい空気を作られちゃったのよね。

ううん、どうしたらいいんだろう。
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