クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「おまえ、偉そうに」

千石くんが眉にしわを寄せてから、総務部全体に頭を下げる。

「お騒がせして申し訳ありません」
「いやいや、いつも涼次郎くんは顔を見せてくれるんだよ」

総務部長が笑顔で取りなす。その言葉に許しを得たとばかりに涼次郎くんが満面の笑みになった。

「そうだよ。俺の方が孝太郎より会社歴長いんだぞ」

千石くんは生意気な弟にため息の様子。涼次郎君の肩をつかみ、誘導している。

「もう、おまえは俺のデスクについてろ。こっちだ。宿題でもしておけ」
「あ、ちょうどいいや。今日やったとこよくわかんなかったんだ。孝太郎、教えて」
「俺は勤務中だ」

そう言いながら千石くんは、涼次郎くんを自分のデスクにつかせ、本当に宿題をさせ始めた。
涼次郎くんはぶうぶう文句を言いながら、デスクに宿題を広げている。
なんだか千石くん、小さな子犬にまとわりつかれる親犬って感じ。

「千石くん、もう定時過ぎてるんだし宿題見てあげなさいな」

野口部長がほんわか言うので、いよいよ涼次郎くんは笑顔になって、問題のページとノートを兄へ差し出すのだ。千石くんは珍しく渋い顔。
弟に翻弄される千石くんは、ちょっと可愛いかもしれない。

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