クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
5.アクシデント



季節は秋の終わりに変わっていた。来週から12月だ。
私は相変わらずの毎日を送っている。
毎日仕事に行き、休日は野々花をはじめとしたわずかな友人と過ごしたり、部屋を掃除したり本を読んだり。

唯一変わったのはベランダにレモンの木を買ったくらい。
野々花と雑貨屋に買い物に行き衝動的に買ってしまったのだ。なんだか、薄暗い雑貨屋の隅に置かれたインテリア的な植物が可哀想だった。
1メートルくらいある木だったので、急遽野々花の旦那さんが車を出して迎えに来てくれた。

「立派な木だし、上手に育てると実がつくよ」

野々花の旦那様の歩さんが言う。実家のお母さんがレモンを育てていたそうだ。

「鉢でも小さいけどちゃんとレモンになる。畑で育ててたうちのばあちゃんのレモンはザボンくらいでかくなってたけど」
「へえ、小さいレモンかわいいだろうね」
「花も可愛いよ。春と秋に咲く。秋のはもう終わっちゃってるね」

日当たりがいいうちのベランダは、レモンにとってなかなかいい場所なんじゃないだろうか。レモンにどんな花が咲くのかわからないけれど、可愛い花がつくのを見てみたい。

「あと、アゲハチョウが卵を産むね。ナミアゲハやクロアゲハ」
「え!イモムシ出るの?」
「イモムシ可愛いじゃなーい。来年の春には花とイモムシが見られるかもね」

野々花と歩さんが楽しそうに笑う。イモムシはちょっと怖いし、葉を丸坊主にされると困る。
だけどレモンでもアゲハチョウでも、うちのベランダで生物が育つって言うのはちょっとワクワクすることかもしれない。
冬が来るんだ。
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