月光


「だから、あたし華夏って呼ぶから、よろしく!

あたしのことも、シオって呼んで!」


「う、うん」


いちいち語尾に感嘆符が付きそうなほど元気な保坂さんは立ち去った。


……なんで私舞い上がってるの?


嫌いな相手が、都合よく名前を呼んでいるだけで。


先生にこれ以上目をつけられないために呼んでいるだけだ。


心の中で呟いてみる。


シオ、保坂志織。


……あ、座席。


前から三番目、窓から二列目。


いい感じだ。


……隣の子は、初めて同じになる。


中学一年の時に同じクラスだった人は、五人くらいしかいない。


ほとんどの人が初対面だ。


「ねえ、名前、何ていうの?」


「あ、わたし?!」


「そうそう」


「松川雅だよ、よろしくね。」


「私は富木島華夏っていうんだ、よろしくね。」


「雅でいいよ。

なんて呼んだらいい?」


「華夏でもいいし、ハナでもいいし、なんでもいいよ。

私、いろんな呼ばれ方してるから。」


「んー、じゃあ華夏にする!」


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