キミへの想いは、この声で。

……理由は、聞いてこないんだ。


私は彼からハンカチを受け取ると、こぼれ落ちた涙を拭った。


「……俺、ちょっとトイレ行ってくる」


彼はそう言い、その場からいなくなる。


多分私に気を遣って、ひとりにさせてくれたんだと思う。


そんな彼の優しさを感じながら、私はなんで泣いているのか、ずっと考えていた。


あの人のことを思い出したから?

楽しかったあの頃を思い出したから?

もう昔には戻れないって、そんなことを考えてしまったから?


どれにしても結局私は、あの人のことで泣いたことになる。


……昔のことを今でも引きずってるんだ、私。


やっぱり私は、友達を作らないほうがいいのかな……。


濡れたハンカチを見つめながら、私はそんなことを考えていた。


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