王子様に恋する私はシンデレラ?!
エピソード0 約束
彼との出会いは去年の夏。

この学園のオープンキャンパスに来た時に助けて貰ったのがきっかけ。

中3の夏、イケメンが多いと噂の学園のオープンキャンパスに友達とノリで参加した。

その日は風邪で朝から頭が痛かったが、そのうち治るだろうと軽い気持ちで友達との待ち合わせ場所に向かった。

中でも特にイケメンが多いと言われるサッカー部を見学するために校舎を出ると、中と外の気温差でフラついてしまった私は1人木陰にあるベンチで横になって休んでいた。

ころころころーーー。

私の寝ているベンチの方にサッカーボールが転がって来た。

ボールを追って誰かが走ってくる。

その人はボールを遠くにいる相手にパスすると、私の顔の前でしゃがみ私の額にそっと手を当てた。

「ちょっと待ってて」

低い声で囁くように告げるとどこかへ行ってしまった。

「起きられる?」

戻ってきた彼は私に尋ねる。

私が頷き、身体を起こそうとすると筋肉質な腕で支えてゆっくり起こしてくれた。

「これ飲んで」

彼は蓋を開けたペットボトルのお茶を私に差し出す。

私はそれを一口のんだ。

(冷たくて美味しい)

ぼーっとしていた頭が少しスッキリする。

「じゃあ俺行くから」

「あ、お金」

「いいよ」

「でも、、、」

「じゃあ今度お礼してよ。約束」

そう言って私の小指に自分の小指を絡ませて微笑むと、彼はコートの方へ駆けて行ってしまった。

暫くすると見学を終えた友達が興奮しながら戻って来た。

情報通の友達にさっきの彼のことを聞くと、心当たりがあると言って撮りたてほやほやの動画を私に見せながら嬉しそうに話してくれた。

サッカー部で1番人気だと友達が教えてくれた男の子が私を助けてくれた彼だった。

友達情報によると、彼の名前は永瀬蓮。

父親がこの学園の理事長。

容姿端麗で運動神経抜群、頭も良い。

その上、紳士な態度に爽やかな笑顔でファンの女子たちからは王子と呼ばれているらしい。

(確かに王子様みたいな人だったなぁ)

彼にもう一度会ってお礼をしたい。

この学園には年に一度のオープンキャンパスの日以外、部外者が校内に立ち入ることはできない。

つまり、彼と会うには同じ学園に通うしかないのだ。

彼との約束を果たすため、その日から猛勉強の日々が始まった。

今まで居眠りをしていた授業も真面目に聞き、夏休みに入ってからは毎日塾や図書館で勉強した。

その甲斐あって彼の通う学園の高等部に合格することができた。
< 1 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop