大好きな先輩は隠れ御曹司でした
『歴史オタク』と考古学好きにオシャレさんは少ない。

これは偏見ではなく光希の観察結果だ。自身も他人に不快感を与えず、清潔感があれば良いだろう程度しかこだわりもなかったし、友達にもそんなタイプの方が多かった。

男子の先輩には「せめてもうちょっと……」と言いたくなる程ひどいファッションセンスの人もいるにはいたが。

そんなサークルの中で岡澤侑斗先輩の存在は最初から抜きん出て異色だった。

「確か、白パン履いてたんだよね」

急いで帰った自分のアパートで光希は手早く米を研ぎながら思い出していた。
初めてサークルに行った時、デニムのブルーかチノパンのベージュばかりの中で岡澤の白がとても目を引いたのだ。

と同時に「なんで?」とも強く思った。「なんでこんな人がいるの」と「なんでそんなお洒落なの」の両方の意味で、だ。

「考古学サークルだったしなー……」

サラサラの黒髪に二重の大きな目。睫毛は長くてビューラーも使ってないのにクルンとしていた。唇はぽってりと厚めで、ツルツルの肌。
女子が欲しがるモノを集めて作られたその顔はとても美しかった。
< 12 / 148 >

この作品をシェア

pagetop