傷だらけの君は


「それより今から丁半に行くんだが、お前さんも一緒にどうだい?」


「......おい、まさかとは思うがお前......あいつが稼いだ金は、」


「聞くだけ野暮ってもんだぜ。ま、一応紅には黙っておいてくれよ」



抑えろ。こいつを斬ってもなんの解決にもならない。


刀に伸びようとする手をもう片方の手で抑え込む。



「あいつはお前の娘だろう?」


「いいや違うよ、あれはみなしごだ。力のことを知って、使えると思って拾ってやったんだ。あんな気持ちわりぃ力を使う化け物が俺の子なわけねぇだろう?......ごほんっ、


紅、こちらへ来るんだ。


――ほら、こうやってちょいと威厳を出しゃいいんだよ。ひゃひゃ、したらあの餓鬼、ほいほい騙されて......」


言葉が途中で途切れたので何事かと思ったが、ああそうか、俺が殴り飛ばしたのかと気付く。


咄嗟に刀を抜かなかっただけよかった。


無駄なことで兼定を汚したくなかったから。


こんな屑の汚い脂で刃の斬れ味を落とすのは俺も刀も望んじゃいない。


俺は殴ったその手で自分の懐に手を突っ込み、取り出した金をばらまいた。



「あの娘は......紅は、俺たちがもらう」


頭より先に口が動いていた。

止めようにももう止まらない。



「また後日、改めて金を持ってくる。だからお前はもう紅から手を引け。少しでも近づいてみろ、その時はお前の首を斬り落とす」


「ひっ......そ、そんなの、あんたになんの権利があって!」


「悪ぃな、人斬り集団の副長特権だ。


......いいか、二度とあいつの前に現れるなよ」


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