Silver Night-シルバーナイト-
その音に、思わず口から出かかっていた言葉が喉の奥へと戻ってしまう。
『誰か来たのか』
電話越しでもインターフォンの音が聞こえたのか、梓がそう私に聞いてきて…
「あ、うん。そうみたい」
だけど今は梓との電話を優先するべきで。だってそうでもしないと私はいつまでも進む事が出来ない。
梓と何かあるたび、いつも必ず何処か曖昧なまま終わってしまって…何度も同じ事を繰り返しては後悔している。
進む事も戻る事も出来ないまま…ただ毎日が過ぎてしまっていて……
だけれど、私を現実に引き戻すかのようにもう一度インターフォンが鳴って『客だろ、出ろよ。もう切る』梓からそんな一言が落ちてきて何か返事をするよりも前に
『ゆっくり休め』
そんな優しい言葉と共に電話は切られてしまった。