困難な初恋
4.溺れる
なかなか受注処理が終わらず、残業も22時を過ぎた頃、喫煙所にいくと成瀬がいた。

おー、と片手をあげるその姿に、いつもなら安心して近づくが、

今日は少し緊張しながら近づく。
 

「お疲れ」

「お疲れー」

まじでこの時期、社内処理多くてきっついよな、と仕事のやり取りをして、

タバコもそろそろ終わり、となったタイミングで、やはり成瀬がもれなく話題に出してきた。

「で。例の進捗はどう?」

これまでの経験から、これがゲームの進捗を聞いていると分かる。

「連絡先は交換してるだろ?」

もう確定しているような言い方に、さすがだなと思う。
逃してはくれないか。

「あぁ、交換はしたけど、そっからがな」

「へー。苦戦してるなお前、さすがに。

 あと1ヶ月だからなー」

ニヤニヤしながら指摘する成瀬に、はいはい、とタバコを消しながら応える。

心の中は、複雑な気持ちになっていた。
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