【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

「羽田もう終わり?」
それでも特に気分を害すことがなかったようで、久しぶりに仕事以外の話を振られて、私は小さく頷いた。

「そうか」
そういって何故か私の方へと歩いてきた。

「ちょっとこれから時間ある?こないだの仕事の件で話があるんだ」
仕事の事と分かり、私は気を引き締めると友里へのメッセージ画面を閉じた。

「何か予定ある?」
今までのけんか腰ではなく、私の予定を気にかけてくれるている優しい話し方に、私の無理やり作っていた壁が少し崩れた。

「いえ……」
無意識に言葉が零れ落ちて、私は慌てて「あっ、えっと……」と言葉を探すと、部長はクスリと肩を揺らした。

「じゃあ、ちょっと仕事の話をしたいから晩飯付き合ってくれる?最近忙しくてまともな物を食べてないから、食べながらでもいい?」
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