凛々しく、可憐な許婚
咲夜は、中高一貫校である新清涼女学院に通っていた。

中学の3年間は、かるた部に所属しており、百人一首に明け暮れた。

しかし、文武両道の教えを守る光浦家。

帰宅後は、自宅の道場で、弓道範士である祖父、教士である父に弓道を教わり、中学生で3段を取得させられた。

新清涼女学院高等学校に進んだ1年生の時、親しくなった友達が弓道部に入るというので、一緒に見学に行った。

顧問の先生が、咲夜の祖父と父に弓道の教えを乞うたこともあり、すぐに見つかってしまい即座に入部させられた。

日頃から精神面を鍛えられてきた咲夜は余程のことがない限り、4ツ矢皆中(4本とも当てること)する。

団体戦は五人×四ッ矢の計20本で争われるため、皆中できる咲夜は一年生から団体戦もレギュラーとなった。

初めて参加する8月のインターハイ。

女子高育ちの咲夜にとっては、他校の男子生徒とふれ合う初めての機会だった。

「王子いるかな?」

「このはな学園もこの会場って聞いたよ」

先輩達がそわそわしている。

「ほら、あそこ。いたよ。鈴木くん」

弓道は集中力が大切。試合中は物音や話し声は厳禁だが、競技前の道場はやはりすこし騒がしい。

試合前、団体戦のレギュラーは、各校交代で練習が出来ることになっていた。

的前に立ち、一際、女子高生の注目と歓声をあびる団体が現れた。

「ほら、鈴木くんだよ。やっぱりカッコいい」

先輩達の浮き立つ声に、見学の場所取りをしていた咲夜も思わず目を向けた。

それが、射場で大前(一番立ち)に立つ凛々しい男子生徒。

一学年上の他校の先輩。鈴木尊だったのだ。
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