凛々しく、可憐な許婚

語られる本音

トイレに立った吉高が帰ってこない。

中等部グループのテーブルで飲んでいた筈の咲夜も見当たらない。

酔っぱらった井上を後輩に押し付けると、自分も「トイレに行く」とその場を離れる。

辺りを見渡すと、いつの間にか、咲夜と吉高が二人だけでカウンターで飲んでいた。

「光浦先生」

咲夜は、尊に呼ばれるとうつ伏せにしていた頭をバッと持ち上げ

「はい、なんでしょう?鈴木先生」

と敬礼の姿勢をとった。

酔っているのだろうか?これはこれで可愛いが、吉高の前で酔っているのなら腹立たしい。

「お酒、弱いんですか?」

吉高と反対隣のバーチェアに座って咲夜に問いかける。

「いえ、結構飲めますよ」

「へえ、鈴木先生と光浦先生は一緒に飲んだことないんですね」

吉高が嫌味たらしく呟くのが聞こえた。

そう、咲夜は宅飲みをしないので、お酒が飲めるのか、そしてどの程度までなら飲めるのか尊は知らないのだ。

「それで、どのくらい飲んだんですか」

「中等部のテーブルでハイボールを2杯とレッドアイ、カウンターでカルアミルク、テキーラサンライズ、ミモザ,,,」

結構飲んでいる。

「鈴木先生は楽しく飲んでますかぁ?私は楽しく飲んでますよ。ねえ、吉高先生」

咲夜はニッコリ微笑むと、吉高の肩に自分の頭を傾けてのせた。

「そうだね。咲夜ちゃん」

頭を撫でる吉高にカッとなる。

「飲みすぎですよ。光浦先生」

咲夜と吉高を引き離す尊に、

「鈴木先生には関係ありません。私は先に帰るので、迫先生に伝えてきます」

咲夜は、立ち上がって目も合わせずに言った。

立ち去る咲夜に驚く尊。

「言ったでしょ、油断するなって」

吉高が笑いながら、井上達のいる高等部のテーブルに向かって歩いていった。

咲夜は迫のテーブルに行くと帰宅の意を伝えているようだ。お辞儀をするとまっすぐ出口に向かいドアを開けて出ていくのが見えた。

尊はゆっくりとカウンターを離れると、すばやくドアを開けて、咲夜に向かって走り出した。
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