主任、それは ハンソク です!
11 / 主任、わたしは、わたしがわかりません

 疲れた身体ごと自室のベッドに倒れこむと、もう、着替えすら面倒になった。

「洋子、お前の会社は全くもってなってない。非常識すぎるな」

 帰ってきて開口一番、茶の間の一番上座から祖父が発した言葉。

 非常識って、あなたが言うの? 
 孫の職場に、平気であんなことして、大恥かかせるあなたが。

 この家の非常識は、今に始まったことじゃない。でも、それを知ったのは、恥ずかしながら私が中学に進学してからのこと。数少ない友人たちから、一つ一つ私の言動のおかしなところを指摘されて。

 私の家は地元では古い家柄で、いわゆる地主なんて呼ばれている。苗字を言えば、ああ、あそこの家の子ね、と言われる程度に知られている家だ。
 曾祖父母の代を知っている人は好意的に接してくれるけど、それ以外の人、特に祖父母の代をよく知っている人は、悪印象しか持たれてない。むしろ、厄介者扱いかもしれない。

 私が物心つく頃にはすでに、お前は我が家の跡取りだから、いずれ婿を取らねばならない、とか言われていた。もちろん、友人関係についての横やりもうるさくて、気が付けば周囲からぷっかりと浮いた存在になっていた。

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