主任、それは ハンソク です!

「一人娘さんだと、何かと心配でしょう」

 今度は相手の父親? が声をかけてきた。はぁ、と父が情けない声で返する。

「でも、この通り。お恥ずかしい話、地味な子でして」

 すかさず隣の祖母が答える。確かにそれは自覚してる。でも改めてそう言われると、妙に腹立たしくも感じる。第一、ちょっとでも流行りの恰好をすると、一番怒ったのはあなたでしょ?

「いえいえ、地味だなんて。よ、洋子さんの場合は、清楚っていうんですよ」

 お見合い人の佐野さんが、無理矢理言に言葉を言い換えて、私を持ち上げようとする。でも、その気遣いがむしろ私には心苦しくて、曖昧に微笑みながら俯いた。今さら取り繕われたところで、惨めになるだけだ。

 それからひとしきり、当の二人は差し置かれ、大人同士の会話が交わされた。と言っても、こちらが応対するのは祖父母ばかりで、父親と母親はただの置物状態だったけれど。

「まぁまぁ、ご両家ともすっかり意気投合なさって。よかったわねぇ、広志君」

 はぁ、と、向かい側から声が聞こえた。目線をテーブルの上から僅かに上げると、やっぱり無表情なまま、彼は成り行きで返事させられているように見えた。

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