主任、それは ハンソク です!

 今度は私が卒倒する番だ。

 その紙は間違いなく昨日、私が飯塚さん宛てに書いた伝言メモ。私の書いた“飯塚バイヤー”の文字の上から、ちゃっかり赤ペンで『鈴原主任殿』の文字が上書きされている。

「ぁ、あのっ」

 上ずる声を振り絞る。
 一瞬、社内が静まると同時に、一斉にみんなの視線がこちらに集中するから、ぐっと言葉に詰まる。

「そ、それ、書いたのは、わ、わたっ、わた、しっ……」
「……なにぃ?」

 雷じ……、もとい。鈴原主任の切れ長な奥二重が、遥か頭上から私をロックオンする。
 こ、こわい。単純に、怖い。蛇に睨まれた蛙の気持ちが、痛いほど、わかる。

「も、申し訳、ございませんっ」

 ほとんど条件反射で立ち上がって頭を振り下げたその時。

「だぁかぁらぁ、なんで一々お前らは頭を下げるんだっ!!」

 再び社内中に雷鳴が轟く。体が麻痺したように動かない。

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