主任、それは ハンソク です!

 そんな経緯も相まって彼を白い眼で見る人は多いけど、思い切って相対すれば案外気さくでノリもよく、きちんと筋さえ通せば話も通じるのだという。

 しかも前職は広告代理店の企画担当。

 流行には社内の誰よりも敏感で、彼の企画したフェアはどれも大当たり。
 特に、店内で大人気のコーナー「バイヤーのイチオシ品」も、ほとんどがバイヤーではなく彼のチョイスによる、実質「鈴原主任のイチオシ」ばかり。
 だからと言ってワンマンというわけでもなく、もちろんバイヤーの声にはしっかりと耳を傾けるし、それを第一に策を練る。

 そうしているうちに、彼が頼りになるとわかると、必然的に彼を支持する人も増えてきた。

 そんな柔軟性のある人、とはいえ。やっぱり公序良俗に反する行為や非常識、筋の通らない事を、彼は絶対見逃さない。だから、とりあえず謝っとけ、なんて正に今の私たちみたいな態度は以ての外。

『謝る価値が安くなるから、謝罪の薄利多売はよせ』と。常日頃からあの雷みたいな声で言い放つ。とにかく正論と正義の人なのだ。

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