エリート弁護士と婚前同居いたします
泣き続ける私を覗きこんで、朔くんが困ったように笑む。
「泣き虫」
眉尻を下げた優しい目。

「だって……!  恐かったの、朔くんが離れていったらどうしようって。こんなに好きなのに……!」
必死で言う私の両頬を、彼の大きな手が優しく掬う。
「大丈夫、一生離さないから。俺のほうが間違いなくお前を好きだよ。俺が最初に茜を見つけたから。誰かに茜を奪われたらどうしようって今でも不安になる」

艶やかな低い声が耳朶をくすぐる。色香のこもった眼差しには抗えない魅力が漂う。
妖艶さに魅入られて動けなくなる私に彼が優しくキスをする。甘いキスが私の思考を痺れさせる。繰り返されるキスから彼の想いが伝わる。そっと話しかけるように、強く気持ちを主張するように。緩急をつけて触れられる唇がとても熱い。私の何もかもが奪い取られそうだ。

ペロ、と彼が私の上唇を舐めて、私を解放する。私の思考は既にまともに働いていない。
恥ずかしさで顔が上げられない。

「……可愛い。やっぱり閉じ込めたくなる」
物騒な言葉を甘く呟く彼に、益々顔が火照る。
「一緒に帰ろう」
そう言って朔くんはそっと私の額に口づけた。
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