エリート弁護士と婚前同居いたします
「まさかまだ気持ちがわからないとか、信じられないとか言ってるの? 同棲して何日経ってるのよ」
 呆れたように彼女が私を見る。
「だって、本当によくわからない」
 大好きなつくねを箸でつまみながら拗ねたように返答する。

「出会って間もないのに、どうしてあんな完璧な人が私を選んでくれるのかわからない。そもそもなんで同棲なの? きちんと付き合ってから同棲したっていいでしょ? そんなに急いで同棲する必要ある?」
「それは菫さんが大阪に行くからでしょ? 茜が同居相手を探してたからじゃないの?」
 何を言っているの、と言わんばかりに彼女は私を諭す。
「そうだけど、何もかもが急に押し寄せてきて恐いし、わからないの。私が本気になってしまったら一気に失いそうで」

 そう、私は恐いのだ。この急激な変化もどんどん彼に惹かれてしまう自分の気持ちも。
 彼を最初は信じられないって思ってた。こんなうまい話があるわけないって。
 何かの賭けの対象にされていたり、騙されているんじゃないかって何度も思った。私なんかを騙したところで何の利益もないだろうけれど。

「じゃあそれを上尾さんにぶつけたらいいじゃない?」
 当然のように親友が言って、ビールを一口飲んだ。
「それって?」
 恐る恐る彼女に尋ねる。
「今、茜が私に言ったこと全部。私は騙されていないのか、とか」
ニッコリとほんのり紅潮した頬で彼女が言う。

「まさか! そんな失礼なこと言えないよ!」
 ガタッと思わず立ち上がりそうになる。
「何が失礼なの? 気になって、恐いんでしょ? 一歩が踏み出せないんでしょ? だったらその原因をひとつひとつ取り除くしかないじゃない。茜が彼と付き合いたくない、このまま同棲解消で構わないっていうなら話は別だけど?」
 憎らしくなるくらいに冷静に詩織が分析する。
< 70 / 155 >

この作品をシェア

pagetop