皇帝陛下の花嫁公募
 確かに、アンドレアスは自分が大事だと思うことは、人任せにはできなかった人間だった。だからこそ、軍も自分で率いた。将軍に任せてもいいと思うことがあったが、どうしてもできなかったのだ。

 しかし、結婚してすぐに戦場に赴いたとき思った。

 ここでは死ねない、と。

 自分にはリゼットがいる。リゼットと紡ぐ幸せな夢がある。それを実現するまでは、いや、実現すれば尚更、途中で死んだりできなかった。

 戦いなどないほうがいい。それはずっと思っていた。平和な世の中ならいいと。

 しかし、アンドレアスは隣国を信用できないばかりに、平和条約を交わしたくなかったのだ。機会はたくさんあったのに。

「私は……もちろんおまえを信じている。そして、これからは……信用に足る人を信じていこうと思っている」

 誰も彼も信じることはできない。それは一国の皇帝として無責任だ。だが、誰も彼も疑うのはよくない。

 リゼットがそうだ。

 信じるから愛される。愛されるから守られる。

 そうか。そういうことだったのか……。

「ネスケル、私はこの件を早く解決したい。リゼットと幸せな家庭を築くために」

 まずはスパイ退治だ。

 公爵夫人を追放して、それからすべてが始まる。

 アンドレアスはリゼットのために決意を新たにした。
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