皇帝陛下の花嫁公募

 街の中を馬車が走っていく。リゼットとナディアが乗る馬車が先頭で、他の数台はそれに続いている。

 突然、リゼットは御者に指示するための小さな戸を開けた。

「馬車を祖父の屋敷に向けて」

「承知しました」

 もちろん、このままアマーナリアに帰るわけがない。

 危機は去ったわけではない。自分は安全だが、アンドレアスは依然、危険に晒されているではないか。

 もし、アンドレアスが殺されるようなことでもあったら……。

 わたしも生きてはいられないわ!

 リゼットの馬車が走る方向に、後ろの馬車もついてくる。祖父の屋敷の前に停まると、リゼットはさっと降りて、ナディアに手を貸そうとした。

「リゼット様、役目が逆ですよ」

 ナディアは呆れたようにそう言った。

「何言ってるの。あなたはわたしの命の恩人よ。さあ、まだ本調子じゃないんだから掴まって」
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