皇帝陛下の花嫁公募
「そうはならなかっただろう。君はここへ来て、地道にたくさんの人と触れ合った。料理人や下働きの者達、衛兵、とにかく女官への権力以外は君が握るようになっていたんだ。表面では判らなかったから、公爵夫人も気づいてなかっただろう」

「わたしがそんな権力を持っていたなんて、わたしも気づかなかったわ!」

「そうだろう! 君はそんな人だ!」

 アンドレアスは笑い出すと、リゼットの肩を揺すった。

「本当に私は君を花嫁に選んでよかった!」

「本当にそう思う? こんなおてんば妃でも大丈夫?」

「ああ。君がどんなおかしなことをしでかしたとしても、愛しているよ」

 リゼットは彼の言葉で胸の奥が温かくなってくる。

 どんなわたしでも愛してくれている……。

 リゼットは顔を上げて、彼のほうに向きなおった。

「わたしもよ。わたしもどんなあなたでも……頑固で冷たいことをたまに言うけど、そんなあなたでも愛しているわ!」

「リゼット……」

 彼の瞳が優しく見つめてくれている。

 誰よりも誰よりも愛しい人。

 アンドレアス……。

 わたしの旦那様。

 そっと目を閉じると、温かな唇がリゼットの唇に重なった。
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