皇帝陛下の花嫁公募

　リゼットは活気のある賑やかな市場の中へと入っていき、通路の左右にある露店のひとつひとつを見て回った。

　めずらしい果物や野菜、魚や肉、それらを加工した食べ物の店があるかと思えば、見たこともないようなめずらしい工芸品や色とりどりの布やそれを使って作ったもの、変わった帽子や見事な絨毯などの店もある。

　リゼットは人込みをかき分けて、子供のように夢中になっていた。

　だって、楽しくて仕方ない！

　今度は人形を売っている店を見つけた。そちらに行こうとして、リゼットはうっかり誰かにぶつかってしまい、帽子が取れそうになって慌てて手で押さえる。

「こらぁ、坊主！　どこ見て歩いているんだ！」

　相手は体格のいい男性で、絡まれたら厄介そうな暴力的な雰囲気があった。リゼットは慌てて謝った。

「すみません。よそ見をしていて」

　だが、謝ったのに、怖い顔をして詰め寄ってくる。

「謝って済むと思ったのか。こっちは痛い目に遭ったのによ」

「え、でも……」