不器用な彼女
これは私が悪いのですか?

負の連続

茉由は相変わらず社長にベッタリだ。それを横目に本当は面白くないけど平静を装い仕事をしている。茉由は本当は16時までのアルバイトの筈が、最近は18時頃まで残っていたりする。何だかんだ仕事はあるからやってもらえるのは助かるのだが、社長に付きまとう姿を長く見る羽目になっていてそれは結構ストレスになっている。

でも、社長は何も変わる事なく詩織の家に来たり、詩織が社長の家に行ったりと極秘デートは続いているから我慢。気持ちも体も満たされているから我慢。

「おい、茉由、距離が近い」
「ネイル、少し地味にしてこい」
「お前、変な匂いがする」(香水だけど!)

なんて社長に小言を言われたって少しもへこたれない茉由に感心する程だ。

そんないつもの仕事中にガチャ…とドアの開く音がする。

「おじゃましまーす!」

そこには…詩織が会いたくなかった男が居た。



思わずパソコンモニターに隠れるように身を低くした。条件反射みたいな?



「珍しいね、ここに来るなんて。どした? しばらくウチからの仕事はねーぞ?」

社長はパソコンから視線を外して佐原に話し掛けてる。

「詩織に会いに来たんですけど」


その言葉に社長の顔が一瞬で強張るのが分かる。見たわけではない。空気で感じる。


名前を出されて仕方なくパソコンに隠れるのは諦める。


「佐原くん…私は仕事中なので…」

今すぐ帰って欲しかった。てか、絶対事務所には来て欲しくなかった。



「詩織に用事って何だよ?」

「え?社長何オッカナイ顔してんですか?
日曜日に再会してさ、ほら、あの現場の近くで。

もうすぐ定時でしょ?俺待つし。…詩織、ご飯食べに行こうぜ〜」

空気が重い。いや、痛い。

「てか、お前ら知り合い?」

余計な事を言われてはならぬと先手を打つ。

「あ、大学が一緒だったんです!」

上手く誤魔化せたと思ったのは一瞬で、詩織の言葉を打ち消すように佐原が返事をした。

「うん、それと俺の元カノ!また口説こうかと思って!」

やっぱり言いやがった。余計な事を。

「きゃー!凄い!運命の再会ってやつですか?」

ここにももう一人余計な事を言う女が居た!





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