不器用な彼女

素敵な時間

「お邪魔しま〜す」と後部座席に乗り込む尚美。
助手席には詩織だ。

先程のキスを見られ、「椎名さんて…結構可愛いですね」なんて社長が冷やかされている。

「もう勘弁して、恥ずかしいから!」

「ふふ〜ん、親友としてはかなり安心させて頂きましたけど!」

「社長、耳赤いです」

「お前が言うな!大体お前が先に言わないからだろ?!」

「社長が呼鈴鳴らさないから!」

「あ〜、夫婦喧嘩はやめて〜!」


そんな感じで車内は賑やかだった。



パーティー会場のレストランには既に全員集合しており歓声と拍手で迎えられた。茉由は勿論、取引先の社長さん、担当さん、職人さんなど皆んな顔馴染みばかりだ。

会場はバルーンアートとフラワーアレンジメントで飾らており、ブッフェ形式の大皿料理がズラリと並んでいる。

今日の司会進行役はカツミらしい。いつもより豪華な着物を身に纏い、主役よりも目立ってるような気がする。

乾杯をし、食事が始まる。

お腹の大きな詩織を気遣い、社長はテーブルと大皿を往復し甲斐甲斐しく料理やドリンクを運んでくれる。

「俺はそんな優しくしてもらった事は無い!」
「社長がそんな優しいなんて!」
と冷やかされてばかり居る。

社長は「うるせーな!」といつもの様に凄んでるけど耳は赤くて表情はとても柔らかかった。








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