不器用な彼女
晴れの日

巣立ち

「とてもお綺麗ですよ」

メイクが終わりそっと目を開ける。


鏡に映る自分に驚く。

尚美からプレゼントされたドレスを豪華にリメイクしたものを身につけ、プロの手によって髪もメイクも仕上げられている。ベールも付けられその上にはパールのティアラが優しく輝いている。

「詩織、綺麗よ。恭介さん、きっと驚くわ」

詩織の側で支度を見守っていた母親が目に涙を溜めている。まだ式も始まってないのに。

「お母さん、あんまり泣かないでよ?私、すぐ貰い泣きしちゃうんだから!」

「そんな事言われても…」

母親は泣き虫だ。
それが遺伝してか詩織も泣き虫だ。


「失礼致します。新郎様のお支度も整いました」

介添人の後ろには白系のタキシードが異常な程似合う社長が居る。



(…恭介さん…素敵すぎますぅ…)



格好良すぎて言葉が出ない。
格好良すぎて直視出来ない。


「想像以上に…綺麗だ…マジで…」

社長は口元を抑えて少し照れてる。

「きょ、恭介さんの方こそ!格好良いです!」



「お二人ともよくお似合いよ。

恭介さん…詩織を大事にして下さいね。もう泣かせないで下さいね」

「はい!」

「あと!家族計画は計画的に!」

「はい…スミマセン…」

「お母さん、先にチャペルに行ってるわ。お父さん、ガチガチに緊張してたから…様子見てくるわ」


母は笑って、でも、少し寂しそうに控え室を出て行った。
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