明治、禁じられた恋の行方
12.見えない心

「おい!見つかったぞ!」

麗斗が千歳の部屋に飛び込んできた。

千歳が久我家別宅の一室に移ってから、3日も経っていなかった。

麗斗が千歳を別宅に案内した時、こんな所では晴成にバレてしまうのでは、と躊躇う千歳に、同じ事は繰り返さねぇよ、と麗斗は言った。

前の事件を知り、何て愚かな事を、家の恥晒しが、と麗斗を白い目で見た家族がほとんどだったが、
別宅に住んでいた麗斗の祖母は、これまで何に対しても淡白だった麗斗の情熱に感動し、千歳の行く末を心配してくれていた。

お世話になります、と千歳が祖母に頭を下げると、「晴成はめったにここには来ないから安心して。」といたずらっ子のように笑った。

そんな千歳が荷解きを済ませ、先日訪問した知人に手紙を書いていた折のことだった。


「ほんと!?」


まさか、こんなに早く!?


驚きで目を丸くしている千歳を椅子に掛けさせ、麗斗も興奮気味に話し始めた。

安心しろ、楽な仕事じゃない、

言葉に反して、麗斗は挑発的に笑っている。


「イギリスからの客の通訳だ」


ヘマすんなよ。

その言葉を聞き、千歳はゴクリと唾を飲み込んだ。
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