私の好みはクズなんだってば。

そんなにからかわないでよ by 凛

ごめんあたしちょっとトイレー、と実咲が席を立つ。それと入れ替わりに寒川が電話を終えて戻ってきた。

「寒川、バイト先から電話か?」

「うん、ちょっとね。まぁ大したことないから安心して」

「了解、なんか飲むか?」

「今みんなグラス空いてるのか、じゃあちょっとここらでショットとかどう?」

「お!よきよき!やろーよ」

「またお前は弱いくせにそーやって調子に乗る」

腕まくりをしてノリノリの私の頭を里崎苦笑しながらが小突く。そう言いつつもスマホにはショット×4の注文画面が。

「やった、ありがと里崎ぃー」

冗談で抱きつくと、焦ったように「ちょっ、離れろお前…」と突き放す。

「なになに、いつもなら「今日は妙に素直だな、この後ホテルでも行くか?」とかふざけて言うくせにー。ノリ悪いなー」

ふくれっ面で脇をくすぐる。やめろお前、と言いながらも必死で耐える里崎をさらにくすぐる。いつものお返しだ。

「仲いいな、里崎と笠原さんって付き合ってるんだ?」

じゃれあっていたら、突然寒川から爆弾が投下された。

「いっ、いやいや!?付き合ってないよ!里崎遊び人だし、飲み友達!!悪友ってやつ!!!ね、里崎!」

急いで里崎の顔を見て同意を求めると、一瞬すこし顔が陰る。が、見間違いだったのかすぐにニヤニヤとした笑みを浮かべる。まずいこれは私をいじめようとしているぞ。

「こないだはあんなにいい声で鳴いてたのにそんなこと言うか?悪い女だな」

「はあああ!?違う、えっとこれは里崎の冗談だから真に受けないで寒川!」

そのやり取りを聞いて寒川がふふっと上品に笑う。

「とりあえずすごく仲良しなのは分かったよ。里崎もあんまり笠原さんいじめてやるなよ」

「いじめがいがあるのが悪い」

「いや理不尽でしょ!!」

ふてくされていると実咲が戻ってきて、それと同時にショットも到着した。ふてくされた私は乾杯を待たずにショットグラスを1つ掴んで一気に煽る。

「あーもう、凛せっかち。里崎また凛怒らせたの?」

「勝手に拗ねてる」

「……」

じゃあ拗ねてるお子ちゃまは置いといて残りのみんなでカンパーイ!と実咲がショットグラスを掲げ、テーブルにガラスのぶつかる小気味のいい音が響いた。
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