ディナーセットのサラダみたいな
「…は?突然何馬鹿言ってるんだ」

私の血迷い言を見逃してくれない方が一名。
幼馴染の京介である。

「何ってことないけどさぁ…
私もう結婚適齢期過ぎるんだわ、分かる?」

京介はモテるから心配ないかもしんないけど。
なんて宣うと、彼の手でコーヒー缶が歪んだ。

あれ、だってお前フッてるよね?
お前のこと好きな娘とか一杯いるよね?
選び放題じゃん、仕事にかまけてるだけで。

…何で怒ってんの?
しかも何、自然にコーヒー缶潰さないでよ。

…あれ、コーヒー缶?

…コーヒー缶ってスチールじゃなかったか?
人の手で処理できるように変更されたのか~。
エコになったもんだなぁ~。

…あっ駄目だ、後輩ちゃんが凄えビビってる。
私の幼馴染が悪いね、美人の怒りは怖いよな。

「このご時世恋愛結婚が主流なんだよ、
知りもしない男に嫁がなくたっていいだろ」

怒りを隠しもしない眼で私を睨みつける。
顔が整ったやつの真顔はガチで怖い。

…コイツなんでこんなに怒ってるんだ?

お見合いにトラウマでもあんのかな。
だとしたら、悪いことしたな。

「自分をちゃんと見てくれる奴を選べよ」

愛の伴わない結婚は認めないってか?
あー、だからこんなに怒ってるんだなぁ…
お前…そんなにロマンチストだったのか。

「あーいや、冗談だから!
ちゃんと愛し合った恋人と結婚するっての」

「…恋人、いるのか?」

不機嫌且つ心配そうな目を向けられた。
コイツ的確に痛いとこついてきやがる…

「いませんけど!?何か文句あります!?」

いるならまずこんなコト言わない。
というか言わなくていい。必要がない。

奴はどこか安心した風にに力を抜いた。
自分より先に恋人が出来たら悔しいってか。
お前これまで何人フッてきたか言ってみろ。

「それこそお前の方はさぁ…」

めっちゃフッてんじゃん、という前に。
ふと時計が目に入った。

…あ、休憩時間終わるわ。

「あー…午後会議かぁ…」

会議室に缶詰めにされてしまう。
熟成和葉ちゃんが出来上がる前に終わってくれ。

「…萩原」

歪んだコーヒー缶を傾けた彼が此方を見やる。

「ぅん?何?」

心配げな表情で一言。
珍しく弱気な顔をしている。
何か悩み事だろうか。

コイツ仕事脳だからなぁ、疲れてるのかも。
まあ大切な幼馴染だし、話くらいなら…

「…見合いなんてするなよ」

「分かっっっとるわ!」

何回言うんじゃお前!
ちゃんとじきに恋人作って報告しますよ。
大体京介にこそ、言っておかねばならない。

「お前こそ、あんま理想求めすぎないでね?
京介は凄いやつなんだから、自分に釣り合う娘がいいとか思ってたら駄目だかんね」

そう、京介は凄い奴だ。

私なんかの語彙力では語りきれないが、
歴史上の偉人だとか、物語の主人公と
並びたてるくらいの男だと思う。

だからこそ!
自分と同じくらい凄い奴を探してるようじゃ!
いつまで経っても見付かんないでしょうが!

…と、思った通りのことを言ったのに。
京介(と後輩ちゃん)は、頭を押さえていた。
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