エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

もしかしたら、彼女にも思い当たることがあるのだろうか。だとしたら、なんという偶然だろう。

驚きと同時に芽生える、妙な仲間意識。僕は彼女に興味を持ち、ふたりきりで話をしたくなった。

場所を居酒屋から僕の気に入りのバーに変え、僕のからかいに初心な反応でこたえる巴を可愛らしいなと思いつつ、彼女の過去の恋愛話を聞いた。

その内容があまりにも自分の経験したものと似ていて、彼女の痛みが手に取るように伝わってくる。しかも、政略結婚が前提にあった僕とは違い、彼女は真剣に恋愛をしていたさなかにそんなつらい経験をしたのだ。

だから、社内恋愛をあそこまで嫌うようになったんだな……不器用な子だ。

そう思いながら見つめた先の、巴の少し酔いの回った物憂げな横顔に、僕は心をきゅっとつかまれるのを感じた。

彼女に同情しているのか、自分が癒されたいだけなのか。……それとも、本物の恋心なのか。

その判断がつかないまま、気づいたら僕は隣の彼女に顔を近づけ、その柔らかな唇を奪っていた。

「……悪くないですよ、社内恋愛も」

そのことを、彼女に教えたいし、同時に自分も教わりたいと思った。

同じ経験をした彼女が相手なら、きっと裏切られることもない。

……けれど、いきなり本物の恋人になる勇気も自信もまだなくて。


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