Sentimentalisme
「えぇー…みんなもう知っていると思うが」
担任の先生が重たい口を開く。
泣き出す者、俯いたままの者、無表情のまま先生を見つめる者。琴佳と付き合っていた仲野くんは後者のようだ。
「このクラスの朝比奈琴佳が亡くなった」
鼻をすする音が悲しげに教室に溶け込む。
「遺書もあり、自殺だった」
先生も言っていたが、みんな知っているので今さら驚くような声を発する者はいない。
わたしはただただ、先生がゆっくりと悲しげに紡ぎ出す言葉を聞くしかない。
特別琴佳と仲がよかったわけではない。でもやはり、クラスメイトが亡くなるというのはショックだ。しかも好きな人の恋人。そして自殺。彼女は明るくて友だちもたくさんいたはずだし仲野くんという彼氏もいた。いじめられていたなんてことは絶対的にありえない。それならどうして。きっと仲野くんが1番そう思っていると思う。
斜め前に座る彼の背中は誰も寄せ付けないような何かがあった。それはそうだ。だって、愛する恋人が自殺をしたんだから。
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