君に恋を始めました

__そしてついに訪れた。


「器用ね」

先生の長い板書を一生懸命ノートに書き写している時、急に彼女の声がした。

横を見ると彼女の真っ黒な瞳が僕を捉えていた。

待ちに待った彼女との会話。
せっかくの大チャンスなのに言ってることがわからない。
なにが器用なのだろう。

黙っていると彼女の視線は再び窓の方に行ってしまった。

「な…なにが」

絞り出すように噛みながら言った僕の言葉に彼女は意外にも反応してくれた。

「手。」

(手?)

自分の手に視線を移すと右手には板書を写すためのシャーペン。
そして左手にもシャーペン。

(あっ、、最悪だ。)

僕は無意識のうちに左右にシャーペンを一本ずつ持ってしまう癖がある。
おかしいよな、、
もしかしてからかわれたのかな。
そう思い顔が熱くなる。

「もうやめちゃったのね、さっき左手のシャーペンが回ってた」

あ、ペン回しのことか。
よかった。
二刀流がダサいという指摘ではなかったようだ。

「ペン回しか。癖で、、」

「へぇ。面白そうね。教えて?」

「…え!」

(教えて?僕に!?)

「あっ…。ごめんなさい、授業中なのに」

僕の反応を悪く受け取ったのか謝る彼女。

「いや、僕でよければ教えるよ」

最後は噛まずに言えた。、
そんな喜びに浸っていると彼女が僕に笑いかけるものだからまた顔が熱くなった。
きっと今の僕は真っ赤になってるだろう、、。
< 3 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop