死にたがりティーンエイジを忘れない


鹿島先生は淡々と言った。


「生徒の『徒』の字は『無駄』という意味を持つ。生徒とはつまり『生きる無駄』だ」


鹿島先生が言葉を切ると、教室じゅうがしんとした。

みんな話に聞き入っていた。

ひと呼吸入れた鹿島先生は、続けて言った。


「学校の勉強なんか何の役に立つんだと、きみたちもつねづね思っているだろう。確かに、受験のために覚え込まなければならない知識の大半は、事細かに記憶していたところで無駄になる。実生活の役には立たない」


鹿島先生は教室じゅうをぐるりと見渡した。

冷ややかに見えるポーカーフェイス。

最後に少しだけ、唇の片方の端が持ち上がった。


「知識そのものは受験の役にしか立たない。だが、ここで身につける勉強のやり方は、必ず将来、きみたちの生活の役に立つ。仕事の役に立つ。生きることの役に立つ。
だから、きみたちはこれからの高校生活、大いに無駄に過ごしなさい」


後で聞いたところによると、鹿島先生は、日本で屈指の偏差値の高い大学を出ているらしい。

皮肉屋の変わり者。

職員室でも教室でも、よく本を読んでいる。

好きなものはタバコとコーヒー。


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