死にたがりティーンエイジを忘れない

死に物狂いになってみる



わたしが高三に上がる時、ちょっと大変な事が起こってしまった。

両親の転勤が決まったんだ。

行き先は、木場山のすぐ近く。

もしもわたしが両親に付いていくとしたら、転校は避けられない。


両親は、特に母は、心配したり悩んだりする様子だった。

わたしは迷うことなく決めた。


「転校はしない。下宿して、このまま卒業まで日山高校に通う」


親と離れて暮らすことについて、寂しいとはまったく思わなかった。

むしろ、解放される、と気が楽になった。

一人暮らしではないにせよ、親に気を遣わなくてよくなる。

学校に行けなかった中学のころから、わたしはずっと親との同居がきつかったんだ。


引っ越しの荷物をまとめるので、三月は慌ただしかった。

わたしの下宿先を提供してくれた人は、祖母の妹という微妙に遠い親戚だった。

それまでに何度か会ったことがあった。


大叔母は、下宿生がいるときにお世話を引き受けたり引き受けなかったり、けっこう自由にやってきた人だ。

旦那さんは若くで亡くなって、ちょうど下宿生のいない今は一人暮らしだった。


「あんたがいてもいなくても、あたしゃ好きにやるからね。ごはんは出すけど、顔を合わせない日もあるかもしれないし、洗濯も掃除もあんたがやんなさいね」


あいさつに行ったとき、大叔母からそう言われた。

この人は本当に日本人なのかな、というファッションと雰囲気の人だった。


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