死にたがりティーンエイジを忘れない
五 大学生:さよならティーンエイジ

流されていくということ



「きみ、夢飼いのバイトさんですよね? 定食屋の、夢飼いの」


いきなり声を掛けられたのは、レンタルDVDショップでのことだった。


定食屋ドリームキーパー、通称夢飼いでのバイト上がり、二十三時三十分。

わたしの部屋はこの店の真上だ。

DVDショップのビルは、二階以上が一人暮らし向けの賃貸マンションになっている。


わたしに声を掛けたのは若い男性だった。

愛想がよくて隙のない笑顔の、色白な美形。

少し長めの茶髪がオシャレな印象だった。

大学生だろう。


響告市は大学や専門学校がたくさんあって、どこもかしこも学生であふれている。

本屋やカラオケやゲームセンターみたいな若者向けの娯楽が豊富で、飲食店も学生がターゲット。

響告大学のほど近くに位置する定食屋の夢飼いもご多分に漏れず、お客さんの大半は響告大の学生や院生だ。


わたしは彼の顔をじっと見たまま、返事をしなかった。

どう答えたらいいのか。

にらむとまではいかなくても、目元をしかめるのが自分でもわかった。


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