雨のち晴れ

雨のち晴れ


地面に激しく叩きつける雨。

分厚い雲で覆われた空。

あの日と同じ。

この場所で晴馬は命を落としたんだ。

持ってきた花束をそっと置く。

周りには私と同じように花を持ってきている人、手を合わせている人、涙を流している人もいた。

あの日の事故で春馬を含めた5人の人たちが命を落とした。

それだけでなく、片足をなくした人、車椅子生活を余儀なくされた人もいた。

この事故は全国でも大きな話題となった。

事件の犯人は運転中に薬物を使っていたそうだ。

犯人は即死。

私はやりきれない気持ちでいっぱいだった。

きっと残された人たちも同じだっただろう。

そのことを思うとますます悔しくなる。

私はしばらくの間、事故現場にとどまっていた。

違う、足が動かないんだ。

その場から離れることができない。

誰か、助けて......

すると、後ろから「美琴」と私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
< 33 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop