雨のち晴れ

あれ......?

雨の音が大きくなり、人々の動きが止まった。

何よこれ......

雨の音だけが聞こえてくる。

すると目の前に人だかりができていた。

そこにいる人々は同じ場所を見ている。

気がつくとなぜか私はそこへ向かっていた。

体が重い。

まるで私の中に「そこには行ってはいけない!」という自分がいるようだった。

「早くしろ!救急車を!」

「しっかりしろ!」

再び人々が動き始める。

「とお、して、ください......」

人混みをかき分けて人々の視線の先を見る。

「はる......ま?」

そこには、大切な人の姿があった。

しかし彼は横たわり、目を閉じていて動かない。

晴馬......

彼の服は真っ赤に染まり、周りにも赤黒い液体が雨と混じり合ってどんどん広がっていく。

「血......」

私は膝から崩れ落ちた。

そんな.....

ゆっくりと近づき彼の頬にそっと触れる。

私の手は震えていた。

周りの人たちが私に話しかけてきたが、全く入ってこない。

「晴馬......晴馬、晴馬!」

そう言って彼の手を体を揺らす。

しかし、晴馬は動かない。

今度は手を握る。

でもその手は私の知っている晴馬の手ではなかった。

温かく、私が握ると優しく握り返してくる手ではない。

「冷たい.....」

晴馬の手は冷たく、私がどれだけ強く握ってもいつもみたく握り返してこない。

「いやだ......いやだよ!晴馬目を開けてよ、ねえ!」

叫んでも叫んでも晴馬は動かない。

神様、お願いだから晴馬を連れて行かないで......

お願い、お願いだから......

私は激しく降り続ける雨の中、ひたすら祈っていた。
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