私は強くない
再び眠ってしまった俺は、腕の中で目が覚めただろう倉橋に気がついて、目が覚めた。

ただ、目は開けず倉橋が、この状況をどう見るのか、知りたくて寝たフリをした。

「…よかった、脱いでない」

…っ、なんの心配をしてるんだ。
倉橋は、俺としてしまったんでは?と気にしてるようだった。
いくらなんでも、酔って泣いてる女を抱いてしまうほど、飢えてないよ。キスはしたけど…。

どうする?

俺。

どこで目を覚ます?

このまま、倉橋がどう出るか見ていたい気持ちもあるが、そうなると無理でも倉橋が腕の中から出ていきそうだったから、わざと気がついたフリをして俺は目を開けた。

腕の中で抱かれていた倉橋を見て、理性が飛びそうになった。
俺を上目遣いに見る倉橋と目が合った。

可愛い。

このまま…

いや、ダメだ。まだだ。


本気で慌ててしまった。

そんな俺に倉橋は、

「いい年した大人だから、責任を取れとか言わないですよ」

なんて言いやがって。

つい責任を取りたいって言ってしまった。
慌ててごまかしたけど。
聞かれてないよな?

寝起きの倉橋は心臓に悪い。
10代20代の恋愛やってんじゃないんだから、と自分に言い聞かせていた。
やばいな。
恋愛から遠ざかりすぎだろ、俺。

また都築に呆れられそうだ。


ベッドの上で、恐縮して謝る倉橋。
しかし、よく眠れたと聞いて安心した。少しでも、ゆっくり眠れたのなら、俺はそれでよかった。しかし、何か考えている、下を向いている倉橋が心配で顔を見ようとした。
慌てて、化粧も取れてるから見ないでと両手で顔を隠す倉橋。
つい、その手に自分の手を重ねながら、綺麗だ魅力的だと言ってしまった。

「名取課長、恥ずかしいです」

と顔を真っ赤にして言う倉橋に、俺も慌てて手を離した。
多分俺も顔が赤くなってたと、思う。
2人顔見合わせて、声に出して笑っていた。

その笑った顔を見て、安心した。



気がついたら、昼近くまで寝ていたようで、倉橋に食事をどうするかと聞いたら、お礼にと作ってくれるらしい。
その前にと、シャワーを浴びたいと言うので、今、シャワーを浴びている。


………

落ち着こう。
出かける為のシャワーだから。

そうだ。

コーヒーでも入れて落ち着こう。

ほんと、いい年したオッさんが何、緊張してんだか。
倉橋が、シャワーから出てきたら飲めるようにと、コーヒーを入れる為にキッチンに行った。

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