私は強くない

「もう、これで全部よね？」

「あ、うん。みんな揃ったな。じゃ、復活にかんぱ…」

何が復活なんだか。
遮った、次の言葉を、

「何が復活なの？」

「何って、俺たちだよ。ヨリ戻すんだよな？」

私の手を握ろうとする、拓真の手を払って続ける。

「拓真、これだけは言っておくわ。あなたとやり直す気はないから」

「な、なんだって！これまでの事は悪かったって思ってる。もう浮気もしないし、慶都しか見ないから…お前しか いないんだよ！」

「拓真、私になんて言って別れたのか、忘れたの？強いから一人でも大丈夫って言ったよね？私は甘えないし、頼りもしないから、男として情けなかったって。拓真は私の何を今まで見てたの？
私は強くなんか、ないよ。
年上だから、我儘言えないって思ってた。聞き分けのいい、フリしてた。
けど、俺についてこい、って言ってくれた事ないよね？
全部私に丸投げで。
お互い様じゃない？私だけが悪いんじゃないよね？
それに、私なら歳も歳だから次ないと思った？拾ってやるよって気だった？そんな簡単な女じゃないよ。バカにするのもいい加減にして。
それに、信じてくれって、何を信じるの？浮気はしない？したじゃない。1回も10回一緒よ！やった事には変わらないんだから！
3年付き合ったぐらいで、私の全てを把握したみたいな事言わないで。
今日だって、私がやり直して、って言うと思ってたんでしょ？
どうしてそこまでオメデタイの？頭の中。そんなんだから、妊娠したって、嘘ついて結婚迫られるのよ。欲望のまま、避妊しないでセックスするから、こんな事になったんじゃないの？どうせ、今日は安全日だからって、そのまま調子に乗ってしたんじゃないの？後先考えないでするから、こんな目にあってんじゃない？けど、そんな相手だから、あなたにはお似合いなのかもね」

最初は、反論しようとしてたけど、途中からその気さえなくなったのが分かった。

浜口香里の事は言わなかった。言った所で、また私に火の粉が飛んできそうだったし、言うだけ、疲れると思ったから。最後に、

「そうそう、来週のプレゼンは私が勝つから。覚悟しててね。それにね、今なら言えるわ、この強さをくれたのは、拓真、あなたよ。ありがとう。それだけよ、もう拓真とは呼ばないし、私の事も名前で、呼ばないでね。会社の先輩、後輩でよろしくね」