夏の日が過ぎた頃
【第1章】朝起きて
【第1章】
ち、ちちち、ち…

目覚まし時計代わりになってはくれそうにない、外からの鳥の声で目がさめる。薄暗い空気の中重たい体を起こして、カーテンに手をかける。

「んんん…」
光が差す窓に少し手を伸ばす。

少し背伸びをして借りた7階の部屋からの景色は、半年前に立ったビルによって遮られてしまいその価値は半減といったところだろうか。

埃を被った目覚まし時計の針は、すこし12時を回ったところで止まっている。

携帯の充電を確認する。緑のバッテリーのイラストとともに表示される15:36木曜日。

徒歩8歩の洗面台で顔を洗い、適当な感じに短髪くせ毛の髪の毛を手櫛で整え、メガネをかける。もうこの一式の動きも体に定着しているため、心の中は無である。

ベッドにかけていた、適当な服に着替えて、机の上からかばんを取って、スマホを入れる。かかとのスレたスニーカーを履き、ドアを開ける。

「…いってきます」

埃っぽさが残る静かな部屋にボソッとした声がこだました。

目的地も用も特にないのでとりあえず歩く。

家を出て5分くらいのところにある小さなカフェ。茶色を基調とした落ち着いた、隠れ家的雰囲気が特徴的だ。

平日ということもあり、ほとんど人がいない。

OPENのボードがかかったドアノブをひねり、重ためのドアを開ける。

一週間前に見つけたばかりだが、慣れた風を装い、メニューはいらないと言うと、バイトらしき店員が顔を見てくる。急かさないで欲しい。といっても、メニューは2つしか知らないのだが。

「じゃあ、コーヒーのブラックとサンドイッチで」
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