夏の日が過ぎた頃
【第4章】あの日の中で
【第4章】
それから、毎週木曜日の放課後、僕は先輩と部室で過ごすようになった。

もちろん、歌も歌ってもらったり、(一緒に歌うこともあった)、他愛のない話をしたりもした。

先輩のバンドメンバーは実は中学の吹奏楽部時代からの友達だとか、大げんかしたことだとか、テストの点とかオススメの本とかそんなことだ。(本については、僕は全く読まないので内容を読み聞かせレベルで教えてくれる親切な人だった。)

そんなこんなで自由に過ごしたが、1つだけルールがあった。それは、先輩の右側に座ること。

先輩曰く、ギターの音がより綺麗に聞こえるらしい。部室に入って右に座るまでは僕は先輩と話をすることも許されなかった。

先輩の歌はいつも、真っ直ぐだった。歌っていたほとんどの曲が、オリジナルだったし、漠然とすごいと思っていた。

先輩たちのバンドは、ステージをすれば、外からも人が来るくらい人気だった。後から聞いた話だが、どうも、先輩たちのバンドは裏ではメジャーデビューの声もかかっていたらしい。だから、三年生の夏休み明けも活動していたのかもしれない。

そんな、バンドに属する、しかも三年の女の先輩と2人きりで過ごせていたことに対して僕は心底幸せに思っていたと同時に、どこか優越感を感じていた。また、初めは静かに歌うスタイルだった先輩も、徐々に声が大きくなってきて、打ち解けられてきているのかななんて、考えてた。この時の僕は先輩がなぜ歌っているのかなんて、疑問にすら思わなかった。


そして、10月を迎えた頃に突然終わりはきた。
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